捨てるという作業が多い遺品整理ですが、まだ使える物を必要としてもらえる誰かに譲ることで、遺族の気持ちが救われることがあります。 「私の目の届くうちは、捨てずにとっておいて。捨てるのは私が死んでからにして。」 昨年亡くなった祖母は、物を捨てずに大事にとっておく人でした。新しい服をプレゼントしても、それは着ないで大切にしまっておき、古い服を着続けるような人でした。 祖母の住まいは借家だったので、祖母にもしものことがあれば、この家を片付け、空っぽにしなければいけないということはぼんやりと思っていました。思ってはいても、それはまだ遠い未来のことだと構えていました。 しかし、その日は突然やってきます。夏に自宅で不調を訴え救急車で運ばれた祖母は、そのまま秋に病院で息を引き取りました。 通夜、葬儀が終わると、悲しみに暮れる間もなく、祖母の遺品整理が始まりました。片付けていると、祖母が一度も袖を通していない服が何枚も出てきました。大事に持っていた服だろうに、捨ててしまうのは胸が痛む。その思いを、老人ホームで働く妹が、上司に相談したところ、施設で引き取って頂けることになりました。 妹曰く、引き取ってもらった服は大好評だったそうです。故人の残したものが誰かの役に立つ。それは、残された私たちにとって大きな救いでした。そして、ものを譲ることで、大事にそれを残していた祖母の思いが繋がっていくのを感じました。